2020年からコロナ禍により外国人留学生の新規入国が事実上停止し、外国人アルバイトに頼っていたコンビニエンスストア、飲食業、飲食料品製造業などは対応に苦慮されているのではないでしょうか。
コロナウィルスの感染状況の動向は不透明ですが、第6波が終息すれば、飲食店やホテルを中心に需要が回復し、さらに人手が不足する状況になると考えられます。
従前より人手が不足している飲食料品製造業、製造業、介護、建設業も、人材の奪い合いに拍車がかかることでしょう。
2022年3月9日の読売新聞によれば、「日本への入国を希望する外国人留学生全員の受け入れを検討」しており、「平日の航空機の空席を活用して、10万人超の入国を計画している。」とのことです。
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220308-OYT1T50293/
この水際対策緩和により、留学生が戻れば、アルバイトを中心とした外国人人材の確保が若干容易になると考える方も多いと思います。
長期的には留学生のアルバイトに加えて特定技能外国人の雇用を検討すべき
しかし、日本人の若年労働者の減少、現業での就労を希望しない労働者の増加傾向からすれば、長期的には、外国人留学生のアルバイトでは対応できない業界が多いと考えられます。
また、第7波により外国人留学生の入国が制限される可能性もあります。
そうすると、現業の人手不足に対応する方法としては、既に日本に入国し、大学や専門学校を卒業した特定技能外国人の雇用を検討するのが最も現実的な解決策です。
「技術・人文知識・国際業務」ビザの外国人を現業で就労させるリスク
いわゆるワーキングビザと言われる「技術・人文知識・国際業務」という在留資格(ビザ)もありますが、工場等において現業に従事させることはできません。
しかし、実際には、単純労働に従事させている工場等が少なくありません。
入管もこの点について危機感をもっており、最近は積極的に調査して、刑事事件として立件される事例が増加しています。
先日も、和洋菓子の老舗として知られる中村屋と採用担当者が、警視庁から捜査を受け、入管法違反(不法就労助長罪)で書類送検されたとの報道がありました(2022年2月3日日経新聞)。
人材派遣から派遣された外国人の在留資格(ビザ)がエンジニアや通訳などを対象にする「技術・人文知識・国際業務」であると知りながら、18年11月~21年6月、工場で資格外活動に当たる和菓子の製造などをさせていたようです。
飲食料品製造業は特定技能の14分野に含まれていますから、中村屋は、工場で働く外国人については、特定技能ビザで雇用すべきでした。
それにも関わらず、人材派遣会社を隠れ蓑に入管法に違反して、技術・人文知識・国際業務のビザを悪用したと思われます。
残念ながら、派遣会社から技術・人文知識・国際業務のビザの外国人の派遣を受けたり、担当する業務を偽って技術・人文知識・国際業務のビザを取得させ、工場等で現業に従事させている会社は少なくありません。
しかし、入管法に違反し、刑事事件として立件されれば、その後の外国人雇用が大幅に制限され、事業を継続できなくなる可能性が非常に高いことから、技術・人文知識・国際業務ビザの悪用は絶対に止めるべきです。
なぜなら、企業が罰金などの処罰を受ければ、技能実習法や入管法により、技能実習生、特定技能外国人を一定期間雇用することができなくなるからです。
入管法違反により、技能実習生や特定技能外国人を雇用できなくなり、工場が止まり、廃業に追い込まれる会社は少なくありません。
不法就労状況からの改善策
万が一、「技術・人文知識・国際業務」ビザを持つ外国人を、工場などの現業に従事させている場合には、直ちに「技術・人文知識・国際業務」に相応しい業務に変更するか、ビザを特定技能等に変更するべきです。
しかし、「技術・人文知識・国際業務」ビザを持っている外国人とすれば、家族の呼び寄せができず、在留期間の上限が5年に留まる特定技能ビザに変更することは受け入れないでしょう。
そうすると、「技術・人文知識・国際業務」のビザに相応しい業務を担当させるしかありません。
しかし、既に多数の「技術・人文知識・国際業務」の外国人を雇用している場合、相応しい業務の量が不足してしまいます。
このように、こうした会社は、ジレンマに陥っており、非常に難しいかじ取りを強いられます。
警察から捜査を受けた場合や入管から調査の連絡があった場合はもちろん、そうでない場合でも、在留資格「技術・人文知識・国際業務」ビザの外国人を現業に従事させている会社は、直ちに外国人労務に精通した弁護士に相談すべきです。
行政書士などにビザの申請業務に精通した方はいらっしゃいますが、刑事事件の弁護は弁護士以外の士業ではできません。
また、入管法などの外国人労務に精通していない弁護士の場合、何が問題なのかを理解するまでに時間を要してしまいますし、刑事事件として処分を受けた場合の事業に対する影響を見誤って対応してしまう可能性があります。
したがって、「技術・人文知識・国際業務」を現業で就労させてしまっている、あるいは、その疑いがあると感じる経営者の方は、早めに外国人労務に精通した弁護士に対応を相談することをお勧めします。